ダイエットとカラダづくりに関してよく頂くご質問に、現役パーソナルトレーナーが回答しています。メンズトレーニング編では、筋力トレーニングの方法やメニュー、筋肉量が増えるメカニズム、タンパク質摂取をはじめとした食事法など、男性トレーニングのポイントをアドバイスしています。基礎知識編はこちら、レディースボディメイク編はこちらから。
メンズトレーニング編クエスチョンリスト
Q1 筋肉が増えるメカニズムについて教えてください
Q2 自体重のトレーニングだけで体は大きくなれますか?
Q3 筋肉量を増やすためのトレーニングには、どれくらいの負荷が適切でしょうか?
Q4 超回復について教えてください
Q5 筋肉量を増やすためには、どのくらいタンパク質を摂取した方が良いですか?
Q6 肉・魚・大豆。筋肉がつきやすい食材ってどれですか?
Q7 筋トレ後の回復に役立つ食事があれば教えてほしいです。
Q8 「筋肉に効いてる」とか「筋肉を意識する」って、イマイチよく分かりません…。
Q9 筋トレは反動をつけない方が効果的?
Q10 週に一回しか筋トレできません。全身を逞しくさせるにはどんなメニューがいいですか?
メンズトレーニング編Q&A
Q1 筋肉が増えるメカニズムについて教えてください
A1 筋肉に限らず体は過酷な環境になると、それに適応するために「今よりも強くなろう」というメカニズムが働きます。筋肉は他の細胞に比べて、その能力が強いようです。
高い負荷をかけたトレーニングや疲労困憊になるような激しい運動をすると、筋繊維にキズがつくことがあります。その後適切な休養を取れば体はその繊維を修復させますが、その時少しだけ筋繊維が太くなり再生されます。筋力は筋肉の断面積に比例します。体は筋肉の面積を大きくさせることで筋発揮能力をあげ、過酷な環境に耐えられるように変化します。
このような変化が筋肉が増えて強くなるメカニズムです。
(現在でも筋肉の大きくなる理由が、「筋繊維が太くなる」なのか「筋繊維の数が増える」なのかはっきり分かっておりませんが、筋繊維が太くなるという説が定説になっています)
Q2 自体重のトレーニングだけで体は大きくなれますか?
A2 自宅などで腕立て伏せやスクワット、腹筋を行っている人からそのような質問を受けます。
その運動がわずか数回しか行えない人なら、今から自体重で6回、8回、10回と回数が増えていくごとに筋力や筋肥大が起こるでしょう。(筋肥大目的ならそれに加えて食事量アップも重要です)しかし20回以上出来るようになってしまったら、そこから同じやり方では成長は望めないと思います。(フォームを変えたり、スロートレーニングなど新しい刺激を入れれば、変化を望めるかもしれません)
常に体を引き締めていたい、とかダイエットのために運動量を増やしたいという目的ならばずっと同じ負荷の自重トレーニングでも有効ですが、体は環境に適応する能力をもっているので体を大きくさせたいのならトレーニング原理・原則に基づいて負荷を変化させねばなりません。自重トレーニングで変化が望めなくなったら、ジムでのトレーニングをおすすめします。
Q3 筋肉量を増やすためのトレーニングには、どれくらいの負荷が適切でしょうか?
A3 一般的なお答えをしますね。「7〜12回反復するのがやっと」くらいの負荷をかけて行ってみましょう。
初心者の方は「筋肉に効かせる感覚」を習得出来るまでは、重さよりも持続時間と質で勝負。フォーム重視で10〜15回くらい時間をかけ、徐々にターゲットの筋肉に乳酸が貯まり熱く痛くなってくるのを感じながら行いましょう。
筋肉は限界以上の負荷(ストレス)をかけられることで、筋繊維にごく微細なキズがつきます。そのキズを修復する際に以前よりも太くなって成長する仕組みになっています。あまりにもストレスをかけすぎて筋断裂や大きなケガをさせてはいけませんが、15回も20回も同じペースでこなせる負荷では筋肥大は望めません。感覚的な目安は、「徐々に乳酸が貯まり筋肉が焼けつくような感覚になり、反復することが困難」と感じるところまで続けること。それを2〜3セット繰り返すと良いでしょう。
【運動強度の目安】※あくまで目安なので、自分に合う回数を見つけていきましょう。
筋力アップ(力を強くさせたい)… 2〜6回
筋肥大(筋肉を大きくさせたい)… 7〜12回
筋持久力アップ(筋肉のスタミナをつけたい)…20回以上
Q4 「超回復」について教えてください
A4 超回復とは、トレーニングによって筋肉が疲労すると休養中に”以前よりも強く回復する”ことが起きる現象のことをいいますが、正式な論理として使われているものではありません。
どれだけの負荷をかければ超回復を起こせるのかを示す明確な基準はありませんし、筋肉痛を起こせば超回復が来るという単純なものでもありません。ただ確実に言えることは「今のレベル以上の負荷にチャレンジすること」「筋肉を休ませること」を継続してないと筋力アップや筋肥大は起こせないということです。
筋トレ後に最適な休養期間は48〜72時間と言われています。疲労が回復され十分なパフォーマンスを発揮できるようになるには、数日間の休養も必要だと言う事です。効果を出したいがために毎日同じ部位をハードに鍛えても、変化が出ないばかりか最悪はオーバートレーニングで機能が低下します。上級者が週に4〜5回ジムに来ているのは、毎回鍛える部位を分けているからです。
ただし、「48〜72時間」というのはそれなりにハードなトレーニングをした場合の一般論であり、トレーニングレベルやその時の強度によってはあまり参考にならない目安です。回復が十分でないと判断したらさらに休養するべきだし、「回復は十分だ」と感じれば休養を短くしても良いでしょう。女性が行っているような軽いダンベルを使った運動や、軽度のサーキットトレーニングや全身エクササイズならば回復に多くの時間はかからないと思いますので、一日おきでも毎日でも体調に問題なければ行っても良いと思います。
Q5 筋肉量を増やすためには、どのくらいタンパク質を摂取した方が良いですか?
A5 体重1kgあたり1.2〜2.0gを目標に食事を組み立てましょう。
今よりもとにかく大きくさせたいのなら、1.5〜2.0gは摂りたいものです。体重が70kgの人なら一日に105〜140gは必要になります。結構意識して食べないとクリアできない量ですね。
女性の場合をはじめ、適度に筋肉をつけて維持したいときは、あまり神経質にならず、体重0.8g以上を目安にしてもらえれば十分だと思います。ちなみにどんなにタンパク質を増やしても、筋肉に負荷をかける運動を加えないと筋肉量は増え生ませんので、必ず食事&運動で取り組みましょう。
Q6 肉・魚・大豆。筋肉がつきやすい食材ってどれですか?
A6 世間では肉を食べると筋肉が発達するってイメージありますが、魚でも大豆でも同じアミノ酸を含んでいますから同じだと思ってください。動物性タンパク質の方が植物性タンパク質に比べて、筋肉の元になるアミノ酸の割合が人間と近いので利用効率が良いと言われていますが、これもそこまで気にするほど差はないようです。
牛肉や豚肉などの肉に含まれる脂質は、融点が高くドロドロの脂質は腸に負担がかかります。肉を高頻度で使うなら、なるべく脂質の少ないヒレ肉や鶏ササミ・胸肉などを利用しましょう。逆に魚の脂質はサラサラの不飽和脂肪酸が豊富ですので健康にも良い。※2 大豆タンパク質にいたってはそのような脂質の懸念も少ない。納豆や豆腐を米と一緒に食べればアミノ酸バランスは肉に劣らず完璧です。「タンパク質量」とだけに着目せずに栄養全体のことを考え、色々なものをバランス良く食べていきましょう。
※2 魚油は健康に良いオメガ3を含む良質な油であり、ダイエットにも健康にも寄与します。
魚油の融点は人の体温よりも低く溶けるので、血管がドロドロになることはありません。
アジやイワシ、サンマなど青魚に豊富に含まれ、マグロのトロなどギトギトの油は別物です。
Q7 筋トレ後の回復に役立つ食事があれば教えてほしいです。
A7 疲労した筋肉やエネルギーの枯渇した体に速やかに栄養補給することで、その後の筋肉痛の軽減や疲労回復が早まります。
主には糖質とタンパク質が不足している状態になっていますので、トレーニング直後にプロテインパウダーと糖質を組み合わせて飲むと良いでしょう。具体的には、バナナ(1本)やおにぎり(1個)、100%果汁ジュース(200ml)など、「GI値の高く消化の良い糖質」と一緒に食べるとタンパク質の吸収が高まります。特に筋肥大や体を大きくさせたい方は、タンパク質と一緒に糖質を多めに補給しましょう。(ダイエット目的の方は糖質量に注意が必要です)ただし、トレーニング後にタンパク質を含むバランスの良い食事をとれるようなら、直後にプロテインまで飲まなくても十分ではないかと思います。
Q8 「筋肉を意識する」とか「筋肉に効いてる」って、イマイチよく分かりません。
A8 トレーニング原理・原則に「意識性の原則」というものがあります。ターゲットの筋肉を意識しながらトレーニングすると効果がありますよという意味ですが、指導者の行う動作を真似るだけで、「どこをどう使っているのか分からないけどキツい」というレベルでは本当の効果は引き出せません。どこの筋肉をターゲットにしているのかをまず確認し、動作中はその筋肉がしっかり伸び縮みをしているのを感じ、そこに力をこめるように意識して行うこと。それが「筋肉を意識する」ということです。
「筋肉に効いてる」とは、トレーニング中にターゲットの筋肉が刺激され、熱く痛みを感じる状態だと思ってください。適切な負荷をかけ、反復回数を持続していくとその痛みはさらに大きくなり、筋肉は充血し膨張してきます。いわゆるパンプアップと呼ばれる現象です。「とても効いてる」と思える感覚は、言い換えれば「ターゲットの筋肉がパンプアップしている」という状態です。
筋肉を鍛え増やしたいとトレーニングするなら、トレーニング中に筋肉を意識するのはもちろん、しっかりパンプアップするまで筋肉に効かせ続けることです。
Q9 筋トレは反動をつけない方が効果的?
A9 もし筋肉量を増やすことを目的としているなら、基本的には反動を使わず厳格なフォームでなるべく最後まで緊張を解かないように行うべきでしょう。反動を使うたびに筋肉の刺激が抜けてしまうからです。また、ターゲット以外の筋肉も動員されてしまうので、特定の筋肉だけに刺激を入れることが難しくなります。
ただし、反動を使うと良い場面もあります。厳格なフォームで限界を迎えたときに、反動を用いればプラス数回反復できる可能性があるということです。初めは丁寧に行い、苦しくなったら必要最小限の反動を使いトレーニング時間を伸ばすことで筋肉に強い刺激を送ることができます。競技者向けのトレーニングでは目的は勝てるカラダづくりですから、あえて反動を使ってトレーニングを行う方法もあります。反動を使うか使わないべきかは、その人の目的や熟練度によります。
Q10 週に一回しか筋トレできません。全身を逞しくさせるにはどんなメニューがいいですか?
A10 大きな筋肉を優先的に鍛えましょう。「コア」「脚部」「背中」「胸」のトレーニングだけでほぼ全身の筋肉を使う事ができます。これに「肩」「上腕二頭筋」「上腕三頭筋」「ヒップ」「ふくらはぎ」までを加えて、全てまんべんなく行っても良いですが、全てをしっかり効かせることは体力的に困難だし、相当な時間がかかるでしょう。それならば大きな4つの筋群をそれぞれ2〜3種目づつ、徹底的にトレーニングした方が筋肉量を増やし逞しくさせるには適しています。
あえて腕の運動を行わなくても、胸のベンチプレスを行えば上腕三頭筋も鍛えられますし、背中のローイングを行えば上腕二頭筋も鍛えられます。余裕があれば、肩の種目を加えるとさらに逆三角形な体型を作ることができるでしょう。